エネルギー安全保障
アメリカ大統領選で共和党のロムニー候補は、「2020年までに北米大陸でエネルギーの独立を果たす。」と宣言した。背景にあるのは、ここ数年急速に進んだ「シェールガス革命」だ。
地中の頁岩層から採れるシェールガスの開発で米国は天然ガスの一大産出国に変貌した。
米国の天然ガス価格は、供給が大幅に増えたため単位(注1)当たり4ドルとリーマンショック時(単位当たり6〜14ドル)から急落している。
米国の天然ガス価格は世界の中でも極めて低い水準で、製造業の燃料や原料に活用すれば国内産業の競争力を高められる。
米国の原油生産量の見通しは最も多い場合、日量50万バレルペースで毎年増え続けるという予測がある。2030年までに原油の完全な自給自足が可能になる計算だ。
米国のエネルギーが自給自足になれば、世界のエネルギー安全保障体制にも大きな影響を及ぼす。
カナダのオイルサンドや米国のシェールオイルが加われば、西半球にとって東半球産の石油の必要性はなくなる。その分、中東の原油は中国を初めアジアに向かう。
米国にとってエネルギーが自給自足できれば、中東の安全保障に気をもむ必要はなくなる。ホルムズ海峡やシーレーンを守る必要もなくなる。そして、米国が中東での軍縮に動けば中東情勢は流動化し原油価格は高騰する。不安定な中東情勢の影響を最も受けるのは原油輸入の8割を中東に依存する日本だ。
日本のエネルギー自給率は20%を下回っている。80%以上を原油を初め輸入エネルギーに頼っており、国内エネルギーに乏しい日本は、自給率の大半を原子力発電に頼っている(注2)。再生エネルギーは5%にも満たない。長い間エネルギー安全保障を真剣に考えてこなかった付けである。
原子力発電については、その安全性に細心の注意を払いながらも、エネルギーの安全保障の観点からはある程度の依存はやむを得ない。重要なのは、原子力に頼らなくても済むエネルギーの自給体制を作ることだ。
日本は火山国である。地熱発電を初め再生エネルギー開発に積極的に取り組む一方、電力の自由化等エネルギー供給体制の見直しを早急に行う必要がある。
国内で9電力体制と50アンペア/60アンペア問題を100年近くも抱えている国のエネルギーの安全保障は、気の遠くなるような話だ。
注1)単位:100万BTU英国熱量単位
注2)19%の自給率の内15%は原子力発電
[ 2012/10/16 ]
継続は力なり
小泉信三の言葉に“継続は力なり。”という有名な言葉がある。
今年度のノーベル生理学・医学賞を京都大学の中山伸弥教授が受賞した。
受賞理由は、マウスの皮膚細胞からiPS細胞を作った。「皮膚などに変化した細胞が、生まれた頃に逆戻りする。」という発見は生物学の常識を覆した。
スウェーデンのカロリンスカ研究所は、「細胞や器官の進化に関する我々の理解に革命を起こした。」と絶賛した。
今年の2月に天皇陛下は、心臓冠動脈のバイパス手術を受けられた。執刀医は「神の手」と言われる順天堂大学心臓血管外科の天野篤教授である。
両教授共順調に人生の出世街道を歩んで来たわけではない。
山中教授は臨床医になることを目指したが、手術が不得手で「邪魔中」と周囲から揶揄され、臨床医を諦め米国に渡り研究の道を歩んだ。
天野教授も日大の医学部卒業後、なかなか望む職場に巡り合えず苦労を重ねた結果順天堂大学でのポストを見つけ、必死に心臓手術をこなし続けた。ひたすら患者のために働いた。いつの間にか「神の手」と呼ばれるようになった。
この二人の生きざまを見ていると思いだす言葉がある。冒頭の小泉信三の“継続は力なり。”である。
企業人もいつも顧客のことを考え続け“継続は力なり”を忘れないで欲しい。きっと明るい未来が開ける。
[ 2012/10/10 ]
勇気ある撤退
民主党の野田首相は、自民党・公明党との三党合意の中で消費税の増税・一票の格差是正を国会での承認を前提に“近いうちの衆議院の解散”を公にしていたはずだ。ところが、自民党の総裁選後、党首会談に応ずる気配を見せないばかりか“近いうちの解散”もうやむやにしそうな気配である。
国民に増税を強いるのであれば国民の真意を問うのは当然のことであるが、政権にしがみつき唯々諾々と自らの保全を図ろうとするのは、国のリーダーシップを執るものの姿勢ではない。
翻って企業の経営者を見てみると、業績は長期低迷、財務状況は大幅債務超過、資金繰りも大幅赤字で金融機関の支援も得られないままの“所謂”窮境企業の経営者であっても、そのポストにしがみついているケースが多い。
政治家も企業経営者も、勇気ある決断が望まれる。
[ 2012/10/09 ]
相場の行方
「大相場は悲観の中から生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で終わる。」アメリカの著名な投資家ジョン・テンプルトンの言葉である。
ユーロ危機、米国の景気低迷、中国経済の先行き不透明等世界中悲観的なムードが漂っているが、アメリカ株はリーマンショックの前の高値水準まで戻っている。
ユーロ危機の中にあり日本人の多くが危機的状況の中にあると思い込んでいるドイツ株も、2007年の高値圏になっている。
只、日本株は2008年の安値のままの底這いで、相場については悲観的見方が続いている。
もう一度テンプルトンの言葉を思い起してみよう。
[ 2012/10/01 ]
日航の再生
日本航空が、9月12日2年7カ月ぶりに東証1部に再上場した。日航の再生は、企業再生の在り方を考えるうえで示唆に富む。
先ず法的整理の威力である。日航は会社更生法の適用を受けた。裁判所の監督下で1兆円近い有利子負債を減免してもらった。また、会社が倒産したという事実が社員や関係者の衝撃を呼び、それまでのぬるま湯で高コスト体質の経営や従業員の意識を変えた。
人員削減や大型ジャンボ機を低コストの中型機へ変更等、先送りされてきた経営課題が解決された。
「更生法は強力な企業再建ツールである。」と呼ばれる所以である。
日本企業には、企業再生を行うことは恥であり、出来るだけ避けたいという空気が強い。しかし、自力再生が難しい窮境企業にとっては、法的整理も有力な選択肢の一つである。
[ 2012/09/25 ]
2人のリーダー
明日9月11日は、サッカーワールドカップの予選、対イラク戦が埼玉スタジアムで行われる。
監督は共に「Z」で始まるザッケローニ監督とジーコ監督。年齢も共に59歳である。
只、監督としての歩みは対照的だ。
ザッケローニは選手としてのプロの経験はない。早くから指導者をめざしコツコツとプロ監督の道を歩み続けた。ACミラン、インテル・ミラノ、ユベントスというイタリアビッグ3の監督としての輝かしい経歴を持つ。
一方、ジーコは41歳まで選手を続けた。ブラジルで「白いペレ」と言われたほどの大選手だ。その後、鹿島をJリーグ屈指のクラブに育てたが、監督としては2002年に日本代表監督になったのが初めてである。
この2人に共通しているのは選手への思いやりと信頼である。
ザッケローニ監督は「日本選手の能力を疑ったことはない。日本選手に一番期待しているのはこの私だ。」 一方のジーコ監督も「日本に勝てる。選手は自分の能力を信じて欲しい。」と。
日本経済が低迷、企業の活力が低下している現在、この2人のように経験に裏打ちされたプロの経営者が日本企業にも欲しいものだ。
11日の試合を通じ、ザッケローニとジーコの2人の監督から日本人全体が元気なメッセージを受け取って欲しい。
[ 2012/09/10 ]
世襲
政界の世襲が問題になっている。医者の世界でも開業医の6割以上が世襲だそうだ。政治では資金源、知名度、地盤、開業医では設備、患者、知名度等世襲のメリットが多いのも事実である。
一方、世襲は自由な競争を阻害している。その結果、国民の民意とはかけ離れた政治が行われ、政治自体が崩壊していく。医者の世界でも真剣に医療に飛び込もうとする人の機会を狭めている。
企業経営の世界でも世襲や同族による企業経営は限界にきている。同族経営を脱し、前期で退任した武田製薬の武田国男社長、
キリンと統合を決めたサントリーの佐治信忠社長は英断だ。
[ 2009/07/20 ]
汚職
西松建設の不正献金事件が問題となっているが、途上国ではこの種の事件は日常茶飯事に起きている。
国際機関の高官が中南米のA国を訪れ、政府高官の別荘に招待された時、家があまりに立派なのに驚いた。そこで彼がA国の高官に向かって「どうしてこんな立派な別荘を持てるんだ」と尋ねると、高官は”ニヤット”笑って、国際機関の職員に「あの山を見て下さい。山の尾根伝いに道路が見えるでしょう。あれでこの別荘が建ったんです。実際の道路は予算よりも幅が1m狭いんです。」国際機関の高官はあいた口がふさがらなかった。
又、別の機会にこの高官がM国を訪れやはりこの国の高官に素晴らしい農園に招待された。そこで彼がM国の政府高官に向かって「どうしてこんなに立派な農園を持つことができるのですか?」と訪ねた。M国の高官は「前の山を指して山の頂にダムが見えませんか?」高官には何も見えないので「私にはなにもみえないが。」と答えると、M国の高官いわく「何も見えないでしょう。そうですすべてが農園の費用に変わりました。」国際機関の高官は倒れんばかりに驚いた。
この種の話はどうやらいまでも発展途上国だけだはなさそうです。
ありがとうございます。
次回も宜しく読んでください。
[ 2009/06/20 ]
資金繰りの理解を Vo-2
ブログも大勢の皆様に理解して頂くために出来るだけ興味を持って頂ける題材を取り上げていきたいと思っております。
さて今回は笑えない本当の話です。
さる銀行の融資課長さんが資金繰りが厳しくなっていく取引先A社を訪問、社長さんと資金の担当者と面談した時の話。
融資課長「貴社の資金繰りが悪化、底を突こうとしているが・・・ 」
社長「いやそんな筈はない。未が余力があるはずだ。」
担当者に向かって「内には十分な引当金があるだろう。
引当金を持ってきなさい。」
担当者は困り、融資課長さんも唖然としたということです。
経営者の方、資金繰りを十分理解してください。
[ 2009/06/09 ]
GMのリストラ責任者
GMが6月1日米連邦破産法11条(日本の民事再生法に該当)の適用申請を行い法的再生を歩むことになった。
再生を指揮する最高リストラ責任者(CRO)に再生コンサルタント会社のアルバート・コッチ氏が任命された。
翻って、日本で自動車メーカーが民事再生法を申請、再生を行うことになった場合を考えてみると、再生の責任者、管財人には恐らく弁護士が任命される。
日本にも認定事業再生士や再生コンサレタントもいるが未だ歴史も浅く人数が少ない上に社会的認知度も低い。
将来、日本でも事業再生士や再生コンサルタントが活躍する日が来ることを念願しており、その日に向けて日々着実な努力を続けたい。
[ 2009/06/04 ]